気持ちの良い秋晴れの中、亀岡駅から篠山街道を進み辿り着いた「沙桜里庵」は、1300
年以上の歴史がある「薭田野(ひえだの)神社」の参道と江戸時代から続く造り酒屋「大石酒
造」との間に溶け込むように佇んでおり、外構はまだ工事中といった感じでしたが、数寄
屋門の真新しい引戸がお出迎えしてくれました。建物に入った瞬間にマスク越しでもハッ
キリと感じる木の香り、木はもちろん自然素材がふんだんに使われていて五感で楽しめ、
肩の力が抜ける感じのゆったりとした空間でした。
![](https://ica-kansai.gr.jp/wordpress/wp-content/uploads/2022/12/stydy3_20221202.jpg)
講師の石山テクノ建設(株)の石山社長からポリエステル繊維製のベルトやウレタン系
の高靭性接着剤を柱や梁などに巻き付けたり貼り付けたりして耐震補強をする「SRF工法
」、とても軽くて強い炭素繊維強化プラスチック製の板を粘性の高いエポキシ樹脂系接着
剤で貼り付け補修、補強が出来る「CFラミネート工法」、祇園祭の鉾建ての伝統技術であ
る「縄がらみ」の強靭さと見た目の美しさを活かして、どのような場所にどのような耐震
補強を行っているかの熱いお話を伺いました。
![](https://ica-kansai.gr.jp/wordpress/wp-content/uploads/2022/12/stydy2_20221202.jpg)
そのお話の中で思わずメモを取ったこととして、「地域の風土に合った建物を残す」
「人を守る建物でなくてはならない」「伝統と先端技術の融合」というものがあります。
地域の風土に合った建物だからこそ100年以上残っているのであり、それを今後に残して
いくためには古いものを排除するのではなく活かすために先端技術を使う必要があるとい
うことのだと実感させていただきました。
また、内装の一部を担当された(株)インテリアホソイの細井社長、企画担当の吉野さ
んからは、既存の良さを活かすための施工側とのとっても密なやり取りや、商材選定の大
変さ、実際に施工されている商材の説明や拘りなど、現場にいたからこそのお話が伺えま
した。
ここでも、「伝統と現代商材の融合」は最重要ポイントでした。クロスを使用している
箇処はもちろんビニルではなく不織布であったり、手作りタッセルを使ったり、質感を大
切にされていました。個人的には襖の仕上げでしょうか。元々、雲母(きら)摺りの襖紙は
好きでしたので、文様の美しさはもちろん、版木をそのまま使わない使い方、一つ一つ版
を押すなどの手法はわくわくさせていただきました。
![](https://ica-kansai.gr.jp/wordpress/wp-content/uploads/2022/12/stydy6_20221202-1.jpg)
今回の勉強会は、今後のインテリアのあり方を考える良い機会となりました。参加させ
ていただきありがとうございました。長く残るものは良いものだから残るのであり、新し
いものを使ってそれを活かし、残し続けることは携わるものの使命だと感じました。新し
いものを生み出す、今あるものを使う、古いものを活かす、組み合わせる。このバランス
を意識して日々取り組んでいきたいと思います。
No,382 林 千恵