ICA関西に所属する会員によるリレー形式で「室内装飾新聞」に「ICの視点」と題してコラム掲載しています。
2月号は、前田やす子さんに担当していただきました。

室内装飾新聞2月号より

『ICの視点』 ~ インテリア業界と、やってきたAi時代

昨今、もう耳慣れたアレクサ、ChatGPTをはじめとする、Aiの活用が話題です。皆様はお使いですか?私は、Microsoft Bingのチャットを利用しています。文章作成の他、各種商品の検索を指示し、物事の考察や感想を尋ねたりもします。このAiはまだ、Web上の情報をキャッチするだけで整合性はまだ不十分、質問や指示の工夫が必要です。

昨年12月15日に次のような発表がありました。『インテリア資材の販売・卸しなどを手掛けるコマツ (大阪府東大阪市)と同志社大学は壁紙AI識別アプリ「かべぴた」を発表した。スマートフォンで壁紙を撮影するだけで、人の目では特定が難しいシンプルな量産壁紙の品番などの情報を、AIが画像から識別する。今後この技術を応用し、石材や木材などの素材の識別のほか、コンクリートなどの経年劣化推定や、農業・バイオ分野での活用も考えられるという。』(2023/12/15配信 電波新聞社)

この「かべぴた」のようなAiの活用事例からは、建物の間取りや寸法等の情報を読み込ませ、お客様の意向を入力や音声により受信、提案ができるAiの誕生も可能である、という事が読み取れます。インテリア商材、選定のセオリー、学問的なデータも備えるようになれば、ある程度お客様が満足される提案が可能になるでしょう。インテリアコーディネーター(以下IC)の一部の業務に代用できるという事です。

人間の職業をAiが脅かす、と囁かれています。私は、このような発展は便利な事でしかないと考えています。今まで一人ではできなかった事ができる時代が来るのではないか、と期待を持ちます。こうして代用できることが増えるのなら、私達は人間にしかできないことを今よりもっと行えます。人間は物事を多面的に感じることができ、調整やプロデュースをしてその結果、感動を作り出すことができます。私達ICの業務にはその部分がとても大切であり、これはAiを利用しても難しい領域であると考えています。

今後は、Aiによって生成されたプランとの競合もあるでしょうが、使いこなせば協業となります。切磋琢磨でき、ご提供するものの質が高まっていくでしょう。

最後に個人的見解ではありますが、未来の競合であるAiには、このような条件下で先様のご満足を得る内装提案は難しいのでは?という事例をご紹介したいと思います。

◎お好きなインテリアを実現したい若い奥様。中古マンションを全室リフォーム。トラッド(古典的)とコンテンポラリー(都会的)を融合したトランジショナルスタイルが好み。

◎モロッコ調タイルが大好き、気に入っている柄のクロスをリビングに使いたい。

◎大人も子供も落ち着いて過ごせるリビングに。

◎リビング横にある和室をお嬢様の子供部屋に、ミッフィー柄のクロスを使いたい。

◎和室とリビング床のレベル調整の費用を押さえるため、床材は異なる材料/色柄を切替えて突合せる。既存ブラウン木目の枠類と造作は一部利用。

ミックスに次ぐミックス、調整事だらけです。高明度で低彩度のモロッコタイル柄は難易度高め、エンボス加工が無く平坦で頼りなく見えがちです。これを引締めるのが既存の枠色であるブラウン木目、額縁効果です。框組の建具や石目柄の床材というトランジショナルのイメージも演出しつつ、その他の床にはブラウンを配しカジュアルダウンします。相反する二つのスタイルをつなぐのは、タイル柄の補色であるくすみブルーのクロスと、色のセパレーション役の白い枠や巾木、引締め引立てる効果があります。タイル柄の平坦さを逆手にパッチワーク生地のように見立て、隣接する壁クロスにはエンボス加工の厚めのウィリアムモリス柄を選び、キルトを重ねるような優しいイメージを加えます。キーカラーであるブルーと同系色のミッフィー柄のクロスは、ワクワク感と共にクローゼットの中へ。

イメージが相反するようでいて見えてくるのは、クライアント様の大人として頑張る心と楽しむ心、ご家族への優しさです。心の振り幅を拾い上げ空間をプロデュースしていくことは、まさに人間らしい作業。私が大切にしていきたいと考えるのは、この部分です。

※モロッコタイル柄とトランジショナルスタイルのミックス

※closetのミッフィー柄とキルト風の優しさを持つ壁の白いクロス

追記: Ai に現状写真データを提供し『20㎡のLDKの改装プランをモロッコ調タイル柄のアクセントクロスを選んで、提案して下さい』と依頼してみました。検索提案してくれた品番商品の画像への反映は無く整合性も不十分です。今後、どんなスピードで進化をしていくのでしょうか。

(GPT-4への提案依頼~回答画像)

24㎡のリビングダイニングで、LV3361を使ったアクセントクロス壁面のあるインテリアコーディネート画像を作成する。建具屋床も取り換えるパターンとそれらは取り換えしないパターンと、2パターンを作成する。

※Aiの提案.現時点では会頭に整合性が無く非現実的だが、参考にはなる。

RE-IEインテリアデザイン 前田やす子