ICA関西に所属する会員によるリレー形式で「室内装飾新聞」に「ICの視点」と題してコラム掲載しています。
4月号は、三宅 紗世さんに担当していただきました。

『ICの視点』 ~ 「インテリアコーディネーターに依頼する意味とは」
二年前の秋頃、実家の母より電話があり、「経営しているアパートの一室の改装を手伝って欲しい」、という依頼を受けた。
聞くところによれば、外壁塗装は新しく塗替え工事をし、外構も部分的に新しくするが、その一室以外は現在満室の為、部屋で改装出来るのは一室のみという事だった。
依頼を受けて間も無く、アパートのある地元へ帰省し、現場調査を行った。築年数が大分経っている事もあり、元々白っぽく塗られていた外壁は黄変し、外構は塀コンクリート部分に蔓が巻き付き、改装予定の部屋は使い勝手が悪そうだった。キッチンにはキッチンパネルが貼られておらず、お風呂は浴槽と壁の間に隙間があり、トイレは温便座もウォシュレットもついていなかった。
管理会社の工務店と母との直接のやり取りで変更が決まった部分の説明を受け、私の意見を仰がれたのだが、大家歴の長い母でも素人は素人なのか、こちらが指摘しないと気付かない部分があり、幾つか修正が入った。
また、クロスのデザインやトイレのアクセサリーの品番、床材の品番、照明器具の品番等はCGを作成しながら決めていき、完成イメージを共有しながら話がまとまっていった。
完工してから一度確認に行くと、気付く事がいくつかあり、何点かは追加で新しく工事をして貰うことになった。
やっとの思いで完成した現場だったのだが、既存のもので使用できるものは残しつつ、新しく変える部分は変えていき、うまい具合に雰囲気を残しながら完成させた築古アパート改装は、私にとって思い出深いものとなった。
母からは、私を介したことで「気付かない事に色々と気付けた」「アドバイスやCGで時間短縮になった」「後悔せずに済んでよかった」等、色々と感想を貰う事ができ、依頼主からの満足そうな感想に私も感無量だった。
今回の件では、インテリアコーディネーターを介すことで「時間短縮になる」、「普通なら気が付かない事にも気が付くことができる」、この2点を強く感じたのだが、母の様に身近にインテリアコーディネーターがいない大家さんの場合はどうなるのだろう?
近年ではネットの普及が進み、ビジネスマッチングサイト等でも簡単に依頼先を見つけることができるようになっているが、インテリアコーディネーターに依頼をするというクライアントは全体的に見るとまだまだ少ないと思っている。
今回のような賃貸用の集合住宅においては、居住する人の層は様々で、趣向も様々のはずだ。
その場合、できるだけ万人受けするような無難なデザインが求められるのだろう。
しかし、そこにプラスアルファで創意工夫を取り入れるのがインテリアコーディネーターの役割でもある、というふうに私は考えている。
普通だと思いつかないような、住む人に感動を与えることができる、そんな提案ができるのがインテリアコーディネーターであり、住宅建築に携わる全ての者の任務ではないだろうか。
プロの意見を取り入れることで、思いもよらなかった方向へ話が進んだり、感動したり、集客が上手くいったりすることがあるかもしれない。
インテリアコーディネーターに依頼をするメリットは、人によって様々だが、共通している事はきっとそれらではないだろうかと私は考える。

トイレbefore

トイレafter

床before

床after

三宅 紗世/es interior