ICA関西に所属する会員によるリレー形式で「室内装飾新聞」に「ICの視点」と題してコラム掲載しています。
2月号は、尾野 実菜子さんに担当していただきました。

室内装飾新聞2月号より

『ICの視点』 ~ インテリアコーディネーターのインプットとアウトプット

 インテリアコーディネータ-として働きはじめ四半世紀を過ぎましたが、世の中は結構変わりました。振り返ってみますと、バブルが過ぎると物の豊かさから質の豊かさに移り、それにともなって整理整頓・収納や断捨離、今は多種多様な暮らし方へ変化していきました。その長い流れの中で、阪神淡路大震災の後では、作り付け家具の打ち合わせを数多くさせて頂いた記憶が蘇ります。灯に関しては、白熱灯からLEDに変化し。お客様が空間をイメージするために大切な手書きパースはCG(コンピューターグラフィックス)へ。最近はCGも2D(2次元)から3D(3次元)・ウォークスルーなどへ変化し、それをお客様自身も自由に使いこなせるシステムやツールを各インテリアメーカーでも取り入れていますね。

その中で私たちインテリアコーディネーターは、何を求められているのか。

ご縁があった方のバックグラウンドを鑑み、提案者自身の経験とあわせインプットしたものをアウトプットしていく。 最近はお客様自身で得ることができる情報が多い為、こちらが教えていただくこともありますが、かえって迷われてバラバラなインテリアになることも多いようです。お打ち合わせでお伺いすると、お客様が持ってこられるインスタグラムで見るインテリアはどれも素敵ですが、「なぜ素敵に見えるのか」「この間取りにあてはめるとどうなるか」「暮らし方を考えるとどうか」など整理して差し上げる。ご主人と奥様のご要望が違う。それを明らかにし、調和をはかる。それを怠ると「満足度」は下がってしまう。また、ダウンライト一つの提案でも、そこにある意味を理解するのと理解できずにいるのでは満足度が違うため、なぜそこにあるか、なぜそれを提案するかをお伝えするのも大事な仕事だと思います。

ありがたいことにお客様とご縁は、2023年70件、2024年72件ありました。数をこなすとDATA的に流れがわかります。それをアウトプットし、インテリアの提案につなげています。 

上のグラフは2023年と2024年の床色別にDATAとしてまとめてみました。あくまで私が打合せさせていただいた範囲でありますが、2023年はオーク系の色がスタンダード。印象としてはホワイト系とメイプル系が多く それを反映するように北欧のインテリアをイメージされているお客様が多かったです。2024年は無垢床も合わせてウォールナットの床が多かった印象。2023年のグレーとグレージュといったふんわりしたインテリアから、2024年は単色黒やグレーの扉に合わせ、クロスもベースがグレー寄りのもの。男性にも好まれるかっこいいインテリアです。スタンダードなオーク系は2023年より減っています。その代わり、無垢床の中に少しオプションであってもオーク無垢床にしたいという希望のお客様にかわっています。「その他」も2023年より増えていますが、こちらはアカシアや、くすみ色・フロアタイルなど個性的なものとなっています。

空間を大きく占める床の色はインテリアを左右しますので、DATAとしてご紹介しましたが、私たちインテリアコーディネーターは暮らし方に合わせてご案内します。2023年はワンちゃんのための床の引き合いが多かったですが、なぜか2024年は猫ちゃんのご相談が多かったです。

このようなDATAをもとにアウトプットの一環として2024年は北浜にてインテリア展示会を開催しました。

期間限定の貸しギャラリーの空間創りは大変でしたが、カーテン業者様や床メーカー様にご協力いただきました。  

2023年の床色DATAをもとにオーク床色のインテリア・ウォールナット床色のインテリア・楢無垢材のインテリアをブースにしています。オーク床には朝日ウッドテック ライブナチュラルForDogを敷き詰めています。ワンちゃんの為の“滑りにくさ”だけでなくオークの風合いも感じられる人気の高い床ですが、実際にどうなのか?とよく聞かれます。犬種や年齢にもよるので、その場合はサンプルを貸出ししますが、300角ではよくわかりませんよね。展示会でご協力いただきましたので、今後は900x1800の貸し出しも可能となっています。 

「暮らし方は多様化する時代」といわれて久しいですが、時代の流れを鑑み提案していく。しかしながら流行りにばかりとらわれず、その人の個性も暮らしに取り入れていける、そんなインテリアコーディネーターでありたいと思います。

  尾野 実菜子/catty design works代表