ICA関西に所属する会員によるリレー形式で「室内装飾新聞」に「ICの視点」と題してコラム掲載しています。
7月号は、尾ノ井 有佳子さんに担当していただきました。
『ICの視点』 ~ 「2×4工法について考える」
人の基本である衣・食・住に関わるインテリアですが、特に住の部分の住宅に関しては、住まう人の好みや求めるものによって、インテリア、間取りや構造も選択ができると思われます。日常何気なく使う食器も、ワンプレートで盛り付けるか、一つずつのお皿で盛るか。わくわくしながら買ったお気に入りの洋服をいつ着ようかと考えるように、住まいのコーディネートも楽しく、クライアントの好みが存分に現れるのではないかと思います。そんな好みですが、建築構造についても求められるものによって選択できるよう、2×4工法について紹介させてもらいます。
2×4工法(ツーバイフォー工法)は、アメリカやカナダで広く普及した工法で、2×4工法で建てられた日本最古の建物は明治11年築の北海道の時計台です。2インチ×4インチ(6インチ)の木材を使用することで、材料の調達が容易な事、また、枠材を組んで構造用合板を張り、それを組み立てることで線ではなく面で支えているので地震に強く、阪神大震災や東日本大震災、熊本地震の震度6,7の大きな地震においても「被害なし」及び「多少の被害」が約97%以上を占めることがわかっています。阪神大震災では炊き出しに使われた住宅もあり、2×4工法に助けられたというデータも残っています。
また、基礎の上に土台を敷き、その上に構造用合板で床組みをします。その為床下と床の間に隙間がなく、気密性に優れています。
そんな2×4工法ですが、私もこの工法で仕事をするまでは、2×4工法は地震には強いけれどリフォームしにくい工法という誤った認識でいました。実際2×4工法で建てられた住宅のリフォームの相談の際、他の工務店ではこの壁はとれないと言われた。2×4工法なので、リフォームは難しいと言われた。等のお声もきいています。やみくもに壁を撤去するのは危険ですが、2×4工法ももちろん壁を撤去することが不可能ではありません。きちんとルールを守れば撤去したり、増築も可能です。
在来工法と仕上げで大きく変わってくるのは次の2点ではないかと思います。
①窓などの開口部には通常まぐさという部材が入り、ウィンドウトリートメントの下地として使えます。補強のために小さい窓で89mm、大きな窓で184mm以上のまぐさが窓上部に入るためカーテンレール等の下地として使えます。
一度、鉄骨構造の窓にカーテンレールを取り付ける依頼がありましたが、溶接で取り付けていたのか下地がなく、カーテンレールをつけるのに下地から必要な場合がありました。
②クロスは入隅でカットします。これは、2×4工法が壁でささえられる工法であるため、入隅で建物が揺れる構造になっています。ですので、クロスよれを防止するため、必ず入隅でカットして施工するようになっています。
私が所属している会社は、新築はメインで2×4工法を扱っていますが、伝統的な和室をつくられたいとき等は在来工法で新築させてもらっています。真壁は2×4工法では化粧柱を構造体の上に取り付けるようになるので、和室で真壁にされたい人には在来工法がおすすめです。
2×4工法の住宅というだけでリフォームしにくいとか扱いがめんどくさそうと思わずに一つの構造で利点もあると思って構造も選んでもらえたらと思います。
尾ノ井 有佳子/(株)セルビーハウジング