ICA関西に所属する会員によるリレー形式で「室内装飾新聞」に「ICの視点」と題してコラム掲載しています。
6月号は、松井 みやこさんに担当していただきました。

室内装飾新聞6月号より

『ICの視点』 ~ アートのある暮らしとは

 アートには空間を変える力がある。7年ほど前にはじめて作品を購入、壁に飾った時に感じた気持ちです。その思いは年々強くなる一方です。作品を離れた場所から見た時に部屋の雰囲気が変わったのを実感、とても不思議な気持ちになったことを今でも覚えています。

 それまでの私はアートに対してなんだか苦手意識がありました。絵を見ることは好きでしたが、自宅に取り入れるなんてなんだか敷居が高く、とても贅沢なことだと感じていたのです。ある方との出会いでそれが食わず嫌いだったことを思い知りました。実際に作品を飾ってみることで私の思い込みが変わり、一気に身近な存在になったのです。そこから私のアートのある暮らしが始まりました。

 アートとともに生活するようになって感じたことは住まいを豊かで上質なものにしてくれる、ということです。作品を飾ったとたんに空間の空気が変わる、空間に色どりが加わります。また美意識を高める力があることも初めて知りました。作品周辺だけは他の場所よりも片付けたくなるのです。アートにふさわしい空間にしたい、という意識が働くのかもしれません。季節に合わせてディスプレイを変えることが習慣になりました。私にとっては日々の暮らしを整えることにつながっています。

 このことを実感した私は少しずつですが作品を購入するようになりました。ポスターを飾るだけでも部屋はステキになりますがアートにはそれ以上の何かがあるように感じるのです。

 SNSなどでインテリアの情報が簡単に手に入るようになりお客様の住まいに対する意識も変わってきました。インテリアにアートを取り入れてみたい、とおっしゃる方も増えています。最近はレンタルできるサービスも少しずつ増えてきましたし、以前に比べて少し身近な存在になってきているのではないしょうか。

 ですが興味があるけどよくわからない、なんだか敷居が高いという声もよくお聞きします。そんな声を聞くとアートとお客様の距離はまだまだ遠いような気がします。欧米では当たり前のようにアートが部屋に飾られ生活の一部になっています。日本でも生活に取り入れることがもっと当たり前になったら、と思います。

 インテリアコーディネーターは専門家ではありません。

 作品の説明、作者の想いを語ることはできませんがインテリアにアートを取り入れてみたい、という方にインテリアコーディネーターの私達がお手伝いできることはたくさんあります。

 専門家にはできないインテリアに合わせた選び方、飾り方、小物に合わせてディスプレイする方法、アートから考えるインテリアなどインテリアコーディネーターとしてできることがたくさんあると思うのです。

 お客様にとってギャラリーに足を運ぶことはとても勇気がいることだと思います。(私を含めて)そんな方たちに私達インテリアコーディネーターがアートの魅力やその効果をお伝えすることができればインテリアももっと豊かで楽しいものになるのではないでしょうか。

 確かに安い買い物ではありませんがアートは住まいを豊かで上質なものにしてくれます。小さい作品であってもインテリアの格を引き上げてくれます。インテリアコーディネーターがアートのある暮らし、その楽しみ方を提案していくこと、作品やギャラリー、お客様をつなぐ役割をしていくことがこれからますます必要になっていくと思います。近い将来そうなることを楽しみしています。

松井 みやこ/M+INTERIOR DESIGN