ICA関西に所属する会員によるリレー形式で「室内装飾新聞」に「ICの視点」と題してコラム掲載しています。
5月号は、平山ひろ子さんに担当していただきました。

室内装飾新聞5月号より

『ICの視点』 ~ 希望通りの「re:home」の事例

大抵の方が一度は思い、そして考える「re:home」 「リホーム」と一言で言ってもさまざまな理由があります。クロスや住宅設備が古くなった、家族構成の変化そして介護の為の改築など。プランを作成し完工まで手掛ける際、お客様の将来を見据えてプランを作成しなければいけないと思っています。 

 特に50代以降の場合は、家族構成が大きく変わる事、そして身体に不具合も出やすくなってくるのもこの年代。その際に大きく変えたいと考える方が多いと感じます。

 そしてそれは寝室、トイレ等各居室へ希望的な配慮が必要だと考えます。当然各居室の広さも考慮しなければいけませんが。

 先日こういう案件がありました。希望通りに施工する「re:home」をご希望されたお客様。 対象の建物は築50年程の建物で立派な梁も健在。結局それは活かせなかったのですが。大まかなご希望は以下の通り。今では贅沢な平屋建てを二階建てにしたい、リビングにお客様を招きたい等と極々当然のご希望とたくさんの理想が出てきました。初めての事を行うことでとても興奮されていたお客様。この思いは大切にしなければいけない、この思いや希望を叶えつつ、予算と将来を見据えたプランを提案しなければなりません。 改めて、外せない事項等時間をかけてお話ししました。

①耐震性②変わる家族構成③まだ見ぬ家族の為の場所は必要なのか?④夫婦2人になった時には何らかの楽しみを作る場所にして欲しい…と。

 照明は、長らくシーリングタイプを使われていたのでDLをリビングの中心に。逆にダイニング上の照明はインテリアに合わせたクラシカルなペンダントを。クロスは明るく感じさせながらも落ちついた色調に。そしてフォーカルポイントを設けました。リビングとご夫婦の寝室を全て解放して広く使う希望を叶える為、リビングから見える寝室の建具前面を洋和室どちらにも合うクロスを採用。その2居室が視界に入った際、統一感が出るようなプランと施工。全てを明るく!とご希望でしたが、それでは単調になりがちですと話しました。ただし人間の尊厳にも関わるトイレには少しこだわりました。将来の事をシュミレーションしながら、手摺取り付けの下地や手摺として使えるカウンターを設置。介助が必要になっても十分な広さを確保したのでトイレ内の収納力は少ないですが、すぐ近くには新しくパントリーを設けています。結果、ほとんどのモノを取り替えることになって当初の予算から少しオーバーしたのですが「後悔してないし、その逆。安心して生活出来るようになって嬉しい」というお声を頂きました。

 リホームの場合、新築工事よりも想定外のことが起こる確率は高いと感じています。そして お客様が納得できない事や予算を全て使う事はあってはならないと思っています。子育てが一段落するこの年代。急にまとまったモノが必要になることも多々あります。

それでもお客様のご意向と理想を出来る限り叶えるプランを差し上げたい。

そして「re:home」 というイベントを楽しんで頂きたい。お客様に後悔の思いはしてほしくないと言う思いで一緒に考えて作り上げていきます。

 私はお客様とたくさん話をします。ヒアリングに時間をかける事はとても大事だと思っています。改築時だけでなく、インテリアの打ち合わせも一緒です。

 時にはお客様の趣味に合うようなカフェでの雑談も。そして、今回の打ち合わせには施工工事の工務店様にも同席していただきました。現場では職方さんとお客様と一緒に相談しながら…全てお任せ頂けるお客様もいらっしゃいますが、出来る事ならお客様と施工者、IC の三位一体で進めたいと思っています。当然お客様の理想やご要望は伺いながら進んでいきますが、出来る事と出来ない事、やめたほうがいい事を伝えるICでいたいと常に感じています。この業界は3Kといういやな言葉が付きまといますが「ありがとう」と言って頂けるこの仕事に就いて私は良かったと思っています。そして、その三位一体で将来を見据えた理想の家を作り上げる「re:home」は素晴らしいと思います。

平山ひろ子/アトリエCloset主宰