ICA関西に所属する会員によるリレー形式で「室内装飾新聞」に「ICの視点」と題してコラム掲載しています。
10月号は、根来 エミさんに担当していただきました。
『ICの視点』 ~ ロンドンの「エアビー」
最近耳にする「エアビー」をご存じですか?エアビーとは、Airbnb(エアビーアンドビー)の通称で、世界191カ国以上で利用されている民泊サービスです。エアビーのウェブサイトでは、いろいろな国の宿泊施設を手軽に比較できます。普通の家から、お城やヴィラなど歴史ある建物もあり、宿泊先選びが楽しいのも魅力の一つです。
昨年、エアビーで探したロンドン宿泊先は、残念ながら貴族の館ではなく、郊外の庶民的な家ですが、ロンドンの普通の家のインテリア事情を体験することができました。
私は、海外でホテルではない普通の家に泊まるのは初めてでした。驚いたことは、2LDKの間取りに対し、シャワーとトイレが2箇所あるところ!豪邸だけではなく、庶民的な家にも個室ごとにバス・トイレがあるんだと感心してしまいました。約4.5畳の広さにトイレ・洗面台・シャワー付きのバスタブ・タオルウォーマーがあり、内装は、大理石調タイルの壁とPタイルの床でした。設備自体は安価なのですが、広々とした空間が白で統一され、日本の一般的な浴室より格上なインテリアに感じました。バスタブの一部にガラスの仕切りがあり、シャワーの飛沫よけになっています。タオルウォーマーは初めて使ったのですが、タオルがいつもふかふかで気持ちがよかったです。タオルウォーマーのおかげで、部屋もほのかに暖かく、寒さを感じませんでした。トイレと一緒のスペースとはいえ、バスタブにお湯を張ると、ユニットバスより解放感があり、まさに海外気分。旅先で歩き疲れた身体を癒しながら、極上のひと時を感じました。入浴後は、お湯を抜くついでに軽くバスタブを磨いておけばよいので、掃除も楽でした。(基本的に、民泊宿はホテルと違って掃除は自分でします)
個人的にラッキーだったのは、一部バスタブ側面のパネル(エプロン部分)が剝がれていたこと。(普通はアンラッキーか!)おかげでバスタブの下地を覗き見することができました。バスタブ裏側は木枠で下地を造り、薄いキッチンパネルを貼って配管を隠しています。これだと安いFRPのバスタブで充分です。あまりに簡単な造りで、びっくりしました。床に洗い場がない海外スタイルは施工もラフで済みますね。また、日本スタイルでは、脱衣室とトイレとユニットバスを合わせて最低4.5畳くらいのスペースは必要ですが、同じ4.5畳でも一体化することで広々としたスペースになります。個人宅ではなかなか提案しにくいスタイルですが、民泊宿には「個別の水回り」がインテリアの格上げのみならず、費用面でも実現可能かも!と感じました。しかもリフォームの際は、納戸など4.5畳ほどの小部屋を間取りを変えずに活用できます。
日本人と外国人で、浴槽入浴の頻度に違いがあるのかの調査では、「毎日浴槽につかる」「浴槽につかることが多い」と答えた日本人は計64%、外国人は計27%という結果が出ています。(2021年ライオン株式会社調べ)日本人でも、36%は浴槽につからない入浴スタイルなんですね。私もロンドン滞在中は、疲れた時だけバスタブにお湯を張っていました。バスタブの中だけ掃除するのはとっても楽で、洗い場のない水回りスタイルは、家事の負担が少なく、将来的に日本でも浸透するかもしれません。(ユニットバスの代わりに海外風のバスタブ、提案してみたいなぁ・・・)
なんでも、エアビーは、日本の全国古民家再生協会に総額1億5000万円の寄付をしたそうで、インバウンドが復活している中、日本の伝統的な家屋を体験したいと思っている外国人旅行者は多いようです。古民家を民泊にリフォームする際、個室ごとに水回りを設置し、エアビーを利用して日本に滞在する外国人旅行者にアピールしてみてはいかがでしょうか。