ICA関西に所属する会員によるリレー形式で「室内装飾新聞」に「ICの視点」と題してコラム掲載しています。
6月号は、林千恵さんに担当していただきました。

室内装飾新聞6月号より

『ICの視点』 ~ 「素材について考える~インテリアとしての本革」

 最近すっかりスタンダードになりつつある「サスティナブル」という言葉。建築業界でも活発な取り組みが行われています。そこで、インテリア素材としての「革」=天然皮革(本革)に注目してみました。

インテリアで使用される「本革」として思い浮かぶのはソファの張地です。その材料は畜産副産物で、食肉を得た後に残った生皮を鞣すことにより、防腐性、柔軟性を持たせた「革」はまさにアップサイクル素材であると思います。高価な素材ではありますが、手入れをきちんとすることによって長く使えることもまた結果的にサスティナブルだと思えます。

「本革」の特徴としては、吸放湿性に優れる・保温性に優れ温かい・可塑性がある・気温による風合いの変化が少ない・燃えにくいなどのメリット、水に弱い・染色堅牢性が比較的弱い・カビが生えやすいなどのデメリットがあげられます。

 「革は呼吸する」ともいわれる通り、吸放湿性に大変優れており、多湿気候の日本での生活にはとても合った特徴だと思います。保温性に優れ、可塑性があり体にフィットする点もインテリア素材としてのメリットを感じます。

デメリットとしてあげられる面に関しては、生皮から「革」への過程の中で解消できることが多いため、その内容について知ることが必要です。

 生皮の下処理後に行う「鞣し」では防腐性と柔軟性が得られ「クロム鞣し」か「植物タンニン鞣し」かによって柔軟性や厚みに違いがでます。その後の「染色・塗装」により、発色・堅牢度・手触りが決定づけられます。

顔料(ピグメント)仕上げは風合い・発色が悪いが、傷やシミが目立ちにくく、色落ち色あせをしにくい。染料(アニリン)仕上げは色落ち・水や油によるシミ・日差しによる退色がありますが、風合い・発色が良い。その両方を使用したセミアニリン仕上げもありますが、アニリン・セミアニリン仕上げは退色・色落ちがあるのでソファなどの張地には注意が必要となります。最近では、マイクロピグメントという染料に近い発色と顔料に近い堅牢性をもつ超微細顔料仕上げも登場し、塗装の質が上がってきています。

長持ちさせるためのメンテナンスに関しては、水分が染み込みにくい塗装膜があるタイプ(顔料仕上げ)では表面をきれいに保つ、塗装膜がないタイプ(染料仕上げ)は乾燥しないように専用オイルを塗る、水・油をこぼさないなどに注意が必要です。

 インテリア素材として考えた際、これらの内容を使う人や生活、環境に合わせて組み合わせること、素材を知ることは、長く愛着を持って使い続けることへ繋がるのではないかと考えます。

Calm Interior Design 林千恵