ICA関西に所属する会員によるリレー形式で「室内装飾新聞」に「ICの視点」と題してコラム掲載しています。
8月号は、杉本景子さんに担当していただきました。

『ICの視点』 ~ 「クロス職人上がりのマニアックなIC道」
「私の建築の仕事の始まりは、クロス職人の見習いからなんですよ」 お客様とのインテリアのお打合せで雑談になった際、そんなお話をすることがあります。すると「職人さんだったんですか!」と驚かれたり、興味を持たれたりします。職人さんって、お客様にとって非常に興味深いものなのだと感じます。
私のIC道の原点であるクロス職人は、1月の寒い時期からのスタートでした。冷たい水、50m巻きのクロスを担いでの階段の往復、パテが上手くできなくて悩んだり…と大変なこともたくさんありました。ですが、熟練の職人の方々の仕事ぶりに魅了され、自らも施工しながら現場で学ぶ日々はとても楽しいものでした。
今回、このコラムのお話をいただきましたので、そんな経歴が私のご提案方法にどう繋がっているかを少しお伝えできたらと思います。
人は日々暮らしの中で「お部屋の壁」を無意識に目にしています。その「無意識」が、気分や心地よさに少しずつ影響を与えるからこそ、面積の多くを占める内装壁紙の果たす役割はとても大きいのです。
私は、すこぶるハイセンスで有名な賞を取ったというICではありませんが、ありがたいことにお客様満足度は高いと評価をいただきます。そんな私の壁紙選びでの「見本帳」や「カットサンプル」は、単に材料を選ぶためだけでなく、お客様の「好き」や日常の暮らし方を引き出すための「コミュニケーションツール」としても役立ってくれています。
お打合せではお客様の「日常のしぐさ」に目を向け、時にお客様自身の爪でサンプルを引っ掻いてもらうことや、元気なお子様がおられるご家庭では、油性ペンでの落書きが消しゴムでどの程度薄くなるか、体験していただくこともあります。
お客様が気に入って選んだ壁紙に、暮らし始めてから『がっかりしてほしくない』『張り替えになんてなってほしくない』皆さんもそうですよね。
新しい見本帳を開くたびに今でも胸が躍りますが、中には下地や季節によって仕上がりの見極めが難しい商品もあります。だからこそ色柄以外の特性もお伝えしたうえで、お客様に「それでもこの壁紙を選びたい!」と思っていただくのか、それとも別にあるお好みの商品を選ぶのか。それを一緒に悩み、考える時間を大切にしています。
もう一つ大切にしているのが、お客様の「諦めようとしている想い」をくみ取ることです。 私の活動拠点である奈良(中南和)の奥さまは、ご自身の「好き」や「やってみたい」という想いに少し遠慮がちな方がおられたり、トータルコーディネートを考えるあまり「これ貼りたかったけど、合わないですよね」と諦めてしまう方もいらっしゃいます。
そんな時私は、「疲れたなぁってときに『好き』が目に入ると、気持ちが少し晴れやかになりますよ」とお伝えし、扉のついた小さな収納の中や、「このような壁紙と組み合わせたら、まとまりますよ『なじませます作戦です』どうですか」と笑い話をしながら、プライベート空間のポイントに「好き」と思われる色柄やキャラクターの壁紙を貼るご提案をします。たいていご主人も「いいやん」と言われ、奥さまも「貼ります!嬉しい」と笑顔で答えてくださいます。
建築の世界で「自分の仕事はここまで、ここだけ」という境界線を持たずに歩んできました。クロス職人の日々も、ICとしてお客様の心に寄り添う今も、すべてが一本の線で繋がっています。その想いがあるからこそ、お客様や業者様のサポートをさせていただける今があると思っています。

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樹樹サポート 杉本景子
