ICA関西に所属する会員によるリレー形式で「室内装飾新聞」に「ICの視点」と題してコラム掲載しています。
7月号は、南部 隆三さんに担当していただきました。

室内装飾新聞7月号より

『ICの視点』 ~ 「理想の住空間を実現するための「適材適所」とは?」

 かつての日本の家づくりは大工棟梁を中心に経験と感覚が大きくものをいう世界、まさに、棟梁>施主という構図だったという話をよく耳にします。現在は営業・設計・管理・工事・流通まで専門分化され、それぞれ連携しながら家づくりが進められることが一般的となりました。近年はSNSなどを通じて住空間の事例写真を簡単に入手することができ、施主から「この写真と同じような空間にしてほしい」という要望を受ける機会が増えています。しかし、多くの場合は建物の工法や間取り、予算などの制約があるため、内装写真をそのまま再現出来るとは限りません。では、施主の要望に応えるにはどのようなプランニングを行えば良いのでしょうか? 

申し遅れましたが、弊社はいわゆる「町の材木店」として、木材をはじめ住宅資材全般を取り扱う小売販売業という立場から家づくりに携わっています。さて、材木と縁の深い言葉に「適材適所」という四字熟語があります。今では人事でよく使われている言葉ですが、語源を辿れば、日本の風土気候の中で木造建築の耐久性を上げるために梁・柱・土台などに適した樹種や部位を使い分けて配置することから生まれた言葉だといわれています。私が入社した時は木造住宅のプレカット化が既に進んでおり、業務の中でこの適材適所を意識することはそれほどありませんでした。しかし、SNSが普及してからは弊社も事例写真を基に材の提案をする機会が増え、この「適材適所」について、語源の解釈を少し変えながらも意識するようになりました。

例えば、「この写真に写っている床材の見積もりをお願いします」という依頼を元請け様から頂いたとします。その写真には白を基調に整然としたモダンな空間に、節が沢山入った無垢床材が写っています。まずは木目や色味から床材の樹種を判断しますが、写真ならではの留意点として、画像補正や間接照明の効果で写真と実物の色味が違っている場合があります。また写真上で「素材感」までは伝わりにくく、異素材の組み合わせでも統一感が出ているように見えます。モダンな空間に主張性が強い無垢床材が写真では上手くマッチしているように見えても、実際は節や無垢の不揃い感がノイズとなってしまう場合もあります。写真の特性を踏まえながら考えていると「このまま無垢材を提案して良いのか?」「塗装はどうする?」「そもそも床材にそれほど拘りは無いのでは?」など、提案について様々な選択肢が出てきます。いずれにしても完成後の満足度を最大限に上げるための提案が求められますので、材の納期や施工方法まで含めて、元請け様と提案の方向性についてしっかりと擦り合わせを行うことが大切です。

私は仕事柄、床材をはじめ内装材ばかりに目がいきますが、施主が写真の空間全体の雰囲気を気に入られている場合は、写っている床・壁・天井・家具・ファブリック・照明・装飾品など全ての要素から優先順位を検討しなければなりません。前述に挙げた例では、施主が無垢の特性を理解した上で採用したいのであれば無垢床材を優先的に、そうでなければ他の部分に予算を回すことで総合的に満足度を上げることが出来ます。そのようなプランニングを行うためには内装空間に対して幅広い知見で提案出来るプロ=インテリアコーディネーターとの連携が必須だと感じています。

さて、かつての日本の家づくりは大工棟梁を中心に経験と感覚が大きくものをいう世界でした。一方で現在はSNSを通じて様々な事例写真が手に入り、施主もより主体的に家づくりに関われる時代となりました。現代の家づくりにおける「適材適所」とは、施主の潜在的な要望を引き出し、意匠性・強度・予算・施工・工期まで総合的に見据え、専門分化された各分野の知識と技術を共有し合うことで、理想の家づくりを実現していくことを意味するのではないでしょうか?

「現物サンプル」

「床材 写真と現物比較」

  

南部木材株式会社 南部 隆三