ICA関西に所属する会員によるリレー形式で「室内装飾新聞」に「ICの視点」と題してコラム掲載しています。
4月号は、武藤紀久子さんに担当していただきました。

室内装飾新聞4月号より

『ICの視点』 ~ 「空間デザイン心理学®という学び」

みなさんは、『空間デザイン心理学®』を、ご存じでしょうか?

空間デザイン心理学®は、感情や行動に働きかけ、『心が満たされるための空間』をつくるための考え方です。家具の配置やインテリアの好みではなく、心理学・脳科学・行動学の視点から、空間が人に与える影響をとらえて、住む人の特性や本当に望むことを理解し、その人がしあわせな人生へと進んでいけるような空間を目指します。

《それって本当のご要望?》

今から少し心理学的なお話をします。よく聞くお話なので、聞いたことがある方も多いと思います。精神分析学のフロイトの理論によれば、日常で自覚できている想いや行動、話したり考えたりする言葉などの、普段から気づける心の領域の意識は5%に過ぎず、残りの95%は、氷山の大部分が水面下に隠れているように、普段は認識していない、ずっと大きな無意識という心の領域だそうです。

これを、私たちの家づくりに当てはめて考えてみます。

住まいを建てる時は、まず始めにお客様のご要望をお伺いして、それに基づいて様々なご提案をし、打ち合わせを進めていくと思います。ここで一つの疑問があります。そもそも、その核となる「お客様のご要望」というのは、はたして本当のご要望なのでしょうか?もっと言えば、お客様は、本当のご自身の望みに気づいておられるのでしょうか?なんだか考えだすと、難しい話ですね。

《その空間の特性って?》

そして、もう一つの疑問です。私たちが家づくりをする時は、例えば、日当たりの良い南側にリビングを配置して、その隣にはダイニング、キッチンはお子様を見守れるように、オープンキッチンにしましょう、家具配置ではテレビ台はリビングの壁面において、その対面にソファを置きましょう、というように、ある程度こうしたらよいという共通認識みたいなものがあり、それに基づいてご提案していくことが多いと思います。では、なぜその提案が、そこに住む人にとって、よい暮らしと言えるのでしょうか?改めて理由を聞かれると、説明するのは難しいと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

空間デザイン心理学®では、まず住まいの空間を解析して、その空間が住む人にどんな影響を与えるのかを導き出します。そして、住む人の特性や本当のニーズに合わせて、居室や収納などを決めていくという考え方になります。ですので、ご提案に対して、お客様に根拠のある明確な理由を説明することができます。

《夫が料理をしたくなる?》

ここで、空間デザイン心理学®を創設された高原美由紀先生の2023年出版の『部屋づくりの法則』にも書かれている例を、ご紹介したいと思います。夫が料理をしたくなるキッチンの「くじゃくの法則」です。

詳しく載せるのは控えますが、これは生物学的な男性の特性を利用したもので、この法則で、奥様がたまにはお休みして夫にもお料理してほしい、という望みを叶えるキッチンになります。他にも、自然に会話が増える「視野60度の法則」や、会話が優しく聞こえる「言葉尻の法則」など、気になる法則がたくさん載っています。新築時だけではなく、今の住まいで気軽に取り入れられるものもありますので、興味のある方は読んでみて下さい。

私は住宅業界で、12年ほどインテリアコーディネーターとして仕事をしていました。喜びの声をいただく事もあり嬉しい反面、本当にお客様が幸せになる住まいを作れているのかと、経験を積んでいっても自信が持てずにいました。会社を辞め、フリーランスで仕事をすることに決め、なにを大切にするかと考えた時に、シンプルですが、お客様に本当に喜んでもらえるような家をつくりたいということでした。その時に出会ったのが、『空間デザイン心理学®』です。『住まいで人をしあわせにする』というその学びは、ノウハウはもちろんですが、自分自身への指針となっています。私がこの仕事をしているのは、住まいにはその力があると信じているからです。

『ちょっと変えれば人生が変わる!部屋づくりの法則』

高原美由紀著 /青春出版社

新刊 『できる人は25分で「場所」を変える』

高原美由紀著 /青春出版社

家族にとって、本当に居心地のよい家とは?

空間デザイン心理学®の考え方

 <引用:(一社)空間デザイン心理学協会ホームページより

  武藤紀久子 /Atelier Key*coco