ICA関西に所属する会員によるリレー形式で「室内装飾新聞」に「ICの視点」と題してコラム掲載しています。
9月号は、片山香南さんに担当していただきました。
『ICの視点』 ~ 「家づくりに必要な収納計画」
これまでたくさんのおうちの収納を見てきました。モノが多くて収納スペースに収まらないおうちも多いのですが、中には必要な場所に収納がなかったり、圧倒的に足りなかったり、奥行きが深すぎたり、逆に浅すぎたり、収納に問題がありモノが収まらないおうちもたくさんありました。
新築の家づくりやリフォームをする際、生活スペースを中心に考えてしまいがちですが、実は収納スペースの確保はとても重要で、収納計画も同時に行うことが必要です。
収納計画とは、便利で快適な暮らしを実現するためにライフスタイルや家族構成、将来設計に合わせて最適な収納スペースのプランニングをすることです。つまり、「どこに」「何を」「どのように」収納するのかを考えることなのです。収納計画が上手くいくと、モノをすっきり収納でき、生活スペースを広く使えます。モノの出し入れがラクにでき、生活動線や家事動線も短くなると散らかりにくく、家事もスムーズに行えます。
住宅の不満の多くは、上位に「収納」が挙がっています。
出典 「くらしのマーケット」調べ
【調査概要】 調査タイトル:「部屋づくり」に関するアンケート調査/調査対象:「くらしのマーケット」会員585名/調査期間:2021年3月4日~3月10日/調査方法:インターネット調査/調査主体:みんなのマーケット株式会社
住んでから収納の不便さを感じる方が多いです。暮らしやすさや快適性は、毎日使うモノの置き場所や取り出しやすさが大きく影響します。収納は、あればいいという訳ではありません。必要以上の収納スペースは要らないモノを増やす原因になりますし、限られた床面積を収納スペースに割いてしまうことで生活スペースが窮屈になってしまいます。持っているモノの量や日々の生活習慣、間取りに合っていなければ、無駄なスペースになりかねません。だからこそ、新築の家づくりやリフォームの際に、収納を細かく検討することが大事なのです。適材適所に必要なモノを収めるスペースを作れば、日々の片づけがラクになります。片づけがしやすい住まいになると、散らからない快適な空間が維持でき、住んでからも満足度の高い住環境となるのです。
収納計画の進め方
①持っているモノと量を書き出す
家具や家電をはじめ、洋服、食器、掃除用品、本や日用品など、すべての持っているモノを書き出します。現在持っているモノだけでなく、将来のライフプランもイメージして、その時に必要になるモノも書き出します。また雛人形やクリスマスツリーなどの季節飾り、扇風機やヒーターなどの季節家電、キャンプ用品などのアウトドアグッズ、スーツケースなど場所を取るモノも忘れずに!その際に「よく使うモノ」「年に数回使うモノ」「年に1回以下しか使わないモノ」と、使用頻度に分けておくのがオススメです。
②置き場所を考える
どこで使うのかを考え、使う場所に収納スペースを割り振っていきます。調理器具や食品ストックならキッチン周りに、外で使うモノは玄関周り、子どものおもちゃは子ども部屋やリビングなど、モノを使うシーンや出し入れするシーンを具体的にイメージしながら考えます。
③収めるモノに合わせた収納スペースを考える
今持っているモノやこれから購入したいモノのサイズを正確に知っておくことも必要です。モノのサイズを知ることによって、必要な収納スペースを考えることができます。
そして、収納スペースを考える際に大事なことは奥行きの設定です。奥行きを深くつくりすぎると、奥のモノが取り出しにくく、使わなくなってしまい手前のモノだけを使うことになります。そうならないために、何を収納するのかを考えながら奥行きを決めていきます。収めるモノの大きさや形状にあった収納スペースが、適切な場所に配置されていることが大事なポイントになります。
一般的に、本棚は300㎜、食器棚は450㎜、掛ける衣類は600㎜、布団は900㎜くらいの奥行きが必要といわれています。リビングの棚は300㎜が使いやすいですが、季節家電や掃除機を収めるとなると400㎜、モノによってはそれ以上が必要になります。何を収めるかで奥行きは変わります。
モノを収める際には、取り出しやすい高さも考える必要があります。重たいモノは下に置く、使用頻度の低いモノは上に置くなど、使う時のことを考えて収めます。取り出しやすい高さは身長によって違うので、下記のサイズをご参考にしてください。
■棚を計画する際の高さの目安(160㎝の方の場合)
・モノの出し入れできる高さの上限…192㎝(160㎝×1.2)
・引き出しの高さの上限…144㎝(160㎝×0.9)
・使いやすい棚の高さ…64~144㎝(160㎝×0.4~160㎝×0.9)
可動棚にすることで、収めるモノに合わせて棚位置を変えることができます。暮らしで使うモノは、ライフスタイルによって変わっていきます。収めるモノが変った時に棚の高さが変えられると、収納スペースの無駄が生じず、収納スペースを活用することができます。
新築の家づくりやリフォームの際には、収納にもこだわって快適に暮らせる住環境をご提案していただきたいです。
片山香南/LIFECT